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大阪市、野宿者対策の方針を転換?

  
(2000年12月)・・・・・・・・   

大阪市は生活保護の対象となるのは高齢者と、病気の人だけ」としてきたこれまでの基本方針を変え、 「強い意欲をもって働く意志のある人」も生活保護の対象者に加えることとした。

そんなビッグ・ニュースがWebmasteの耳に飛び込んできたのは12月8日の、お昼ごろであった。ソースは毎日新聞系在阪テレビ局のニュース番組。 ほんの30秒ほどの短いものであったが、Webmasterにとってはまさに「キムタク結婚」以来の一大事である。


Webmasterは朝日新聞に読売新聞、日本経済新聞、サンケイ新聞、中日新聞(東京新聞)、ニューヨークタイムス、ワシントンポスト、ウォールストリートジャーナル、USAトゥデイ、 聖教新聞、赤旗新聞・・・・・・・と、ありとあらゆる新聞・Webサイトに可能な限り目を通すことを日課としている(半分ウソ)。その日も新聞・Webサイトには一通り目を通したが、前述のような記事はどこにも出ていなかった。 ということはWebmasterが 唯一目を通していない毎日新聞 (もしくはその系列テレビ局)の大スクープということか?

Webmasterは迷うことなく近所のコンビニへと走った。あった、久しぶりに目にする毎日新聞。どれどれ、確かに1面には

「野宿者に生活保護」「あっせん施設・仕事なく退所の場合」「大阪市方針」

とデカデカと書かれている。 記事本文は以下の通り。

 全国最多の野宿者を抱える大阪市は7日、今秋開所した 入所型就労あっせん施設 に入り、仕事が見つからないまま退所せざるをえない人に生活保護を適用する方針を固めた。市はこれまで、野宿者への適用は高齢者や病気の人に限っていた。適用条件などは今後、詰めるが、「定住場所ではない」 として認めていなかった簡易宿泊施設を生活拠点にする場合も例外的に支給対象とすることも視野に入れて検討していく方針。
 市は10月、北区に野宿者を対象とした自立支援センターを開所。11月には西成区にもオープンさせ、現在約120人が入所。年内にさらに1カ所が開かれる。 入所者には宿所や食事などが提供され、原則3ケ月、最長6ケ月の間、公共職業安定所の職員が職業相談や就職のあっせんをする。
 しかし、市はこれまで、入所期間中に職が見つからない場合について、「再び野宿に戻らせない対策をとる」、生活保護適用を求める声に対しても「働く能力があれば、日雇い市場があるので活用してほしい」と 述べるにとどまっていた。
 生活保護は「資産や能力などを活用しても収入が基準に満たない人」が対象。厚生省は「働く能力があっても、努力したうえで就労できないなら、適用を拒む理由にならない」としており、 市はセンターを今後有効活用する狙いもあって、方針転換を決めた。
 厚生省によると、野宿者は昨年(1999年)10月末現在で約2万人。大阪市は全国最多で、8860人(1998年8月調査)にのぼるが、現在では1万人を超えているのは確実とみられる。市民生局は「努力をしてもみつからない人を、 再びテント暮らしに戻すことは出来ない。ただ、センター入所者全員を対象とすることは財政上からもできず、就労意欲の高い人に限ることになるだろう」と話している。

(12月8日付 毎日新聞より)



この毎日新聞の記事を読むと、「おお、ついに大阪市も本腰をいれて動き出したか!さては大阪市長、オリンピック招致の一環としていかに大阪市が人権を大切に考えているかを全世界にアピールすべく、役所内にハッパをかけたな。まあ動機は不純だが、実りある決断を下してくれたのだから素直に喜ぼうじゃないか。市民生局の人が言うように財政上の問題からすべての野宿者に生活保護を適用することは不可能にしても、 少なくとも野宿者にとって道が開けてきた。この分でいくと西成通信の存在意義もなくなり、即刻閉鎖かな?」・・・・・などとひとりほくそえんでいたのだが、やることだけはやらねばならない。 なにせこの記事を掲載しているのは毎日新聞だけ。いくら信頼のおける大手メディアとはいえ、その言動を100%鵜呑みにするほどWebmasterはお人よしではない。 裏を取るまでは安心できない。 ということでさっそく大阪市役所の民生局に電話をしてみた。
「あのぉ、新聞で読んだ野宿者の生活保護適用の件でお尋ねしたいんですけど・・・・」
そう切り出したWebmasterの耳に飛び込んで来たものは期待を100%裏切るものであった。
「ああ、あのニュースのことですか・・・・大阪市は方針変更などしていせん。すべて今までどおりです」
Webmasterには一瞬、その言葉の意味が理解できなかった。「今までも生活保護の対象は高齢者・病気に限っていたわけではない。ゆえに方針変更をする必要はない」 という意味なのだろうか?わからない。わからないので率直に聞いてみよう。
「えーと新聞記事によれば『今までは生活保護の対象となるのは高齢者と、病気の人だけ』とありますが・・・・」
「それは間違いです。適用の基準はいろいろとあって・・・(後略)」
「では、あの新聞記事は何を根拠に書かれているのでしょうか?大阪市が記者会見を開いたとか、発表をしたのではないのですか?」
「そのようなことはいたしておりません。方針転換の事実も、ありません」
「ということはあの記事に関しては、新聞社側が勝手に書いたということなのでしょうか?」
「そういうことになりますね」
「ありがとうございました」


 うーん、ますますわからなくなってきた。果たして12月8日付毎日新聞のこの記事はスクープなのだろうか、それとも誤報なのだろうか?

 通常、この手の単独スクープがあった場合はライバル紙は同日の夕刊もしくは翌日に第一報よりも詳しい「後追い」記事を出すはずである。 ところがWebamsterの知る限りでは「方針転換」に関する記事はどこも扱っていない。ということはやはり毎日新聞の誤報なのであろうか?

 いや、そんなことはないだろう。大手新聞社の記者がまったくありもしない記事・デタラメ記事を書くとは思えない。それに 「市民生局は『努力をしてもみつからない人を・・・・・・なるだろう』と話している。」と記事にある。 もしこの記事が記者の完全創作であれば、市民生局の名前など出さないだろう。市民生局内で実際には生活保護の適用に関する話し合いがもたれたのだが、 まだ公表する段階には至っていない・・・・と見るのが自然かつ合理的なのではなかろうか。 その極秘の内部情報を、毎日新聞の記者がなんらかの形で入手したとすればすべてに辻褄があう。親しくしている市職員からオフレコという形で情報提供してもらったのかもしれない。 職員が記者との雑談中にポロリと漏らしてしまったのかもしれない。市の福祉政策に不満をもつ職員が「名前を出さないこと」を条件に自主的に情報リーク をした可能性もある。これらは番記者の世界ではよくあることで、「消息筋によれば・・・」とか「関係者によれば・・・」といった表記は誰しも目にしたことがあるのではなかろうか。 記事にある「大阪市は・・・・方針を固めた」といった表現は現時点ではフライング気味かもしれないが、市の野宿者対策方針がこの先、ある程度変わることは間違いない。 その観点からすれば毎日新聞の12月8日のこの記事は誤報ではなく、大スクープなのである。大スクープではあるが、実はこのスクープの裏には実は読売新聞が絡んでいるフシが見られるから面白い。 以下は12月月5日の読売新聞の、朝刊トップ記事である。

「生活保護 厳しく制限8割」

 長引く不況で厳しい雇用情勢が続く中、生活困窮者を救済する生活保護制度の適用を、違法に制限している自治体が主要都市の割以上にのぼることが、読売新聞社の調査で明らかになった。こうした運用 が、野宿者急増の要因煮なっているとの指摘もあり、早急な是正が求められそうだ。

(12月5日付 読売新聞一面より)

 この記事によれば調査は人口35万人以上をめどに、県庁所在地を含む主要都市79市と東京都の担当者に実情を 聞いたところ、「働く能力のある者は保護しない」「住居のない者は入院時以外保護しない」のどちらかに該当、法の 趣旨に反して適用制限をしている自治体が66もあるらしい。

注意) 生活保護の適用基準について厚生省は「働く意欲があっても、求職に努力して現実に仕事がなければ対象になる。 申請時の住居の有無は用件ではない」としている。

 ちなみに大阪市の現状は(Webmasterの知る限りでは) 住居がなければ門前払いで、しかも簡易宿泊施設は住居として認められていない(東京都や横浜市、神戸市は認めている)。読売新聞にも 「(大阪市の場合は)病院か施設にいったん入ることを条件にする」とある。そして厚生省保護課のコメントとして

「画一的な運用はいけないと今春から(自治体の担当者に)何度も会議で説明した。調査結果を参考にしたい」

というものを載せていた。

 いかがであろう。この5日の読売新聞の記事を受けて大阪市の民生局の担当者がなんらかの対策会議を開き、そしてその会議の内容がなんらかの形で毎日新聞記者に 漏れ、8日のスクープに繋がったとすれば一応の辻褄は合うし、合理的でもある。つまりこのスクープは

読売が仕掛け、毎日がスッパ抜く

という非常におもしろい構造なのである。しかも9日には朝日新聞までもが共同戦線に参加(・・・・というよりはおそらく単なる偶然?)、

ホームレス おれたちの世紀末人生 資格あっても路上に 

という特集を組んで、バブル期には3000万円以上の年収があったホームレスや「建築設備士」という資格を持つホームレス、仕事を紹介してもらうために携帯電話だけは手離さないホームレス、夫の暴力(DV)から 逃げているうちにホームレスとなった女性らを紹介していた。


 以上の動きからすると、(市民生局は否定しているが)大阪市が野宿者対策の方針転換に踏み切ることはほぼ、間違いない。 市側は、「方針転換ではない。昔からこうしてきた。なにも変えていない」と言い張るだろうが、それでもいいから早急に行動に移すことを望む。



 ・・・・・・・と思っていたんだけど、19日にテレビ大阪の番組内で大阪市民生局の部長が長居公園問題について、

「3年で長居公園の野宿者はいなくなると確約します」

という趣旨の発言をしていた。これは長居公園に建設している仮設住宅の問題を正当化するためのものだと思われるが、おいおい、野宿者がいるのは長居公園だけじゃないぞ。 長居公園の仮設住宅に投入する大金10億円があるのなら、それを生活保護の原資に回した方がより多くの野宿者を救えるんじゃないの。 仮設住宅は自立支援センターに移るまでの一時的な入居施設、ただ単にテントがプレハブに変わっただけ。だったらその費用をアパート入居の費用や当座の生活資金 として働く意欲のある野宿者に(無利子で)貸し出し、 なんとか仕事をみつけてもらって 後々返してもらった方がいいと思うのだが・・・・・・・・・あ、そうか。生活保護や福祉関係では土建屋や天下り役人達に一銭も入らないからダメか。 生活保護を受けている人は政治献金はできないから政治家も率先しては動かないだろうしなぁ。


 とかなんとか言ってるうちに来年度の国家予算大蔵原案が内示(12月20日)された。その中でホームレス対策として盛り込まれたのは10億7600万円。この10億ちょっとのお金で日本全国のホームレス対策を 行わなければならない。この10億には、野宿者の集中する大阪と東京で大規模な緊急一時宿泊所を設置するための予算2億が盛り込まれている。予定では入所は無料で最長6ケ月宿泊でき、健康診断や生活相談も実施するらしい。定員は1000人、建物はプレハブとなるそうだ。 あれ?ちょっと待てよ。そういえば大阪市は独自に長居公園とかいうところに似たようなプレハブの施設を造っていたなぁ。たしか定員は300人で、費用は3年間で10億だったように記憶しているが・・・・・単純計算でも年間3億ちょっと。 国の計画では年間2億で1000人なのに、なんで長居公園の場合は3億で300人なの?それとも国家予算の2億は単なる補助金で、大阪や東京はそれに数十億円独自にプラスしなければならないのか?

  21日のNHKのローカルニュースで、大阪の野宿生活者についての特集コーナーがあった。数年前にリストラで会社をクビになった男性の生活を追ったもので、 その男性は路上生活と病院の入退院を30回近く繰り返しているという。(比較的)健康なときに市の相談所に行くと、「まだ働ける年齢でしょ」とかいって門前払いされ、それで路上生活していて病気になると「病院へ入院」と言う形で保護されるという。 もちろん医療費・入院代等は生活保護が適用されるので全額市側が負担する。それで数日入院して体調が回復するとめでたく「退院」という運びになり、退院と同時に 生活保護は打ち切り、行き場がないので再び路上生活へと追いやられる。それでもってまたもや体調を崩すと「再入院」となり、生活保護を適用、回復して退院すると同時に「生活保護打ち切り」 、再度路上生活へ・・・・・そんなことが30回も繰り返されているそうだ。こんな状況を見かねたNPO(非営利団体)の職員がこの男性に同行して市の相談所へいったところ、 この野宿者男性に生活保護が認められたという。(野宿者が1人で行ったら門前払いだが、弁護士や医者がバックについているNPOが絡むと親身になって相談してくれる・・・ということか?) この男性以外にも路上生活者に生活保護が認められた件数はこれまでに100件ほどあり、大阪市は「今年度さらに400人に保護を適用する」とニュースでは伝えていた。

  果たして生活保護では1人あたりいくら支給されるのだろう。アパート代に光熱費、食費など生きていくのに最低限必要な額というと・・・・・・ひと月あたり 10万円くらいか?仮に10万円として、1人あたり年間120万円。120万あれば1人の人間が、まともな人間として生活していける。アパートならば住民票も取れる。 テント生活に比べれば、仕事も得やすい。不況とはいえ、パートやアルバイトならいくらでもある。時給7〜800円といえど、路上生活をしながらダンボールや空き缶を集めることに比べれば はるかにいい稼ぎになる。生活保護適用期間中は稼いだ分は市へ収めるので市の実質負担は10万円以下になるし、10万円を超えれば生活保護は不要となる(あくまでも生活保護の月々の支給額が10万円の場合)。これを足がかりに就職することも不可能ではあるまい。保証人やら年齢制限やらですべての人がなんらかの仕事にありつけるとは思えないが、 それでも何億もかけて3年間限定の一時避難所を建てるよりは現実的なプランだと思うのだが・・・・どうだろう?






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